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中居性加害をフジテレビが隠蔽した理由‥第三者委報告で日枝体制の刷新はなるのか?
当時タレントの中居正広による性加害トラブルに端を発するフジテレビの性上納疑惑、並びに性加害隠蔽問題。日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会による調査報告の目処とされた3月末が近づいてきた。中居の引退発表とフジテレビ経営陣の10時間会見からおよそ2ヶ月、あらためて事実を整理することで問題の核心に迫るとともに、今後の展望を探る。
1、何が起きたのか?
すべての問題の発端となった中居氏と女性(週刊誌等の記載に倣って、以下では「X子さん」とする)とのトラブルについて、詳細はいまも明らかにされていない。
週刊誌報道が始まった時点ですでに中居氏とX子さんとの間で示談が成立しており、両者に守秘義務が発生したため、当事者からトラブルの中身に関する発言が一切ないからだ。
トラブルの時期は2023年6月初旬。
場所は中居氏のマンション。
関係したのは中居氏本人とX子さんだけ。
9,000万円とも言われる極めて高額の解決金が中居氏からX子さんに支払われた。
いままでにわかっているのは、ここまでだ。
20代芸能関係者とされるX子さんと50歳(当時)の中居氏との間で、密室で発生した何らかのトラブル‥‥。
あとは推測するしかないのだが、実は2025年1月27日に行われた10時間会見で、当初同意か不同意かで2人の説明が食い違っていた、ということが明らかになっている。「同意」もしくは「不同意」に続く言葉といえば、誰の頭にも同じ4文字のひらがな(漢字だと2文字)が浮かんでくるのではないか‥‥。
やはり、週刊誌報道を見て多くの人が想像した悪夢は、現実だったようだ。
しかし、それがわかっただけではこの問題は何も解決しない。
そもそもこのトラブルはなぜ起きたのか?
そしてフジテレビの対応は正しかったのか?
われわれ一般人がこの問題を知らされた2024年12月からのタイムラインと、当事者たちが知っている2023年5月からのタイムライン‥‥。
ふたつのタイムラインに沿って要点となる事実を並べてみる。
2、これまでの経緯は?
① 2024年12月からのタイムライン
当初はこれほど大きな問題になるとは思われていなかったひとつの記事から、この問題は始まった。
- 2024年12月19日発売の女性セブンが「中居正広 巨額解決金乗り越えた女性深刻トラブル」と題した記事を掲載
※この中で、X子さんはフジテレビに関連した仕事をしていたこと、フジテレビ編成幹部社員のA氏が中居とX子さんに声をかけた会食だったが、A氏は当日にドタキャンしたと報じられた - 12月26日発売の週刊文春が「中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌」と題した記事を掲載
※X子さんの知人の証言として、「彼女は『Aさんに言われたからには断れないよね』と、参加することにした」と紹介 - 12月27日、フジテレビが公式サイト上に「一部週刊誌等における弊社社員に関する報道について」との声明を発表
※会食へのA氏の関与を否定した - 2025年1月8日、週刊文春が「X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』」と題した記事を掲載
※トラブルの発生後、X子さんがアナウンス室の管理職だった佐々木恭子アナウンサーに相談したが、その上司であるアナウンス室長や編成制作局長らの幹部(当時)により握り潰されたとの記事。なお、この中で「会食に誘ったのはA氏ではなく中居本人」と第1弾の内容をひっそりと修正したが、X子さんは「Aさんがセッティングしている会の延長」との認識から会食に参加した、とA氏の影響をあらためて主張 - 1月15日発売の週刊文春が「中居正広『9000万円女性トラブル』新たな被害者が爆弾告白『私もフジテレビ編成幹部によって“献上“された』」と題した記事を掲載
※フジテレビアナウンサーの証言として、「2021年冬にA氏らによって都内高級ホテルに集められ、スイートルームには中居氏と男性タレント、別の女性らがいた。自身は男性タレントに体を触られたり、寝室から全裸になって手招きされたが拒否した」と報じた - 1月17日、フジテレビが本事案発覚後初の社長会見を開催
※定例社長会見の延長というスタイルを採用したため、参加社は限られた上ビデオ撮影は禁止(紙芝居会見と揶揄される)
※第三者を中心とする調査委員会での調査を理由に、港浩一社長(当時)は「回答を差し控える」を連発
※その調査委員会は「日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会ではないと思う」と説明したことがさらに波紋を呼んだ
この時点までに、フジテレビによる「組織的性上納」を疑う声も大きくなっていただけに、この会見の失敗はフジテレビにとって大きかった。閉鎖的で不誠実と受け止められただけでなく、トラブル発生直後の2023年6月から被害状況を把握し、中居氏からも報告を受けていた一方で、スポンサーや代理店には一切知らせず、中居氏が出演するレギュラー番組(『まつもtoなかい』)を放送していたことも明らかとなり、スポンサーによるCM差し止めの流れが一気に加速した。
- 1月22日、関西テレビの定例社長会見
※事案発生時、フジテレビの専務取締役だった関西テレビの大多亮社長は、本事案について「非常に重い案件、衝撃を受けた」とし、中居出演番組の継続については「打ち切りにすることが女性にどのような影響があるか考えた」「中居氏を守ろうという意識はなかった」と語った - 1月23日、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングスの両社が臨時取締役会を開催
※日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置を発表
※フジテレビの社員向け説明会が実施された - 1月27日、フジテレビ臨時取締役会とやり直しの10時間会見
※フジテレビは嘉納修治会長と港浩一社長の辞任を発表
※会見には、嘉納氏、港氏のほか、遠藤龍之介副会長と清水賢治次期社長、金光修フジ・メディア・ホールディングス社長が出席
※プライバシー保護の観点から中継・配信は10分ディレーとされ、フジテレビは地上波で完全中継した
1回目の会見の失敗を踏まえ、参加社を制限せず、カメラでの撮影・配信も可能なフルオープンの会見。午後4時にスタートして翌日の2時23分に終了。計504問に答えた長丁場の会見は一定の評価を得たことも確かだが、後述するようにやり取りの中でさまざまな疑念が増幅し、究明すべき課題も多くが積み残されたままだ。
一言でいえば、企業としてのガバナンスの不全を強く印象付けた10時間となった。
では、問題の根源はどのあたりにあったのか?
これら週刊誌報道や会見で明らかになってきた情報に基づいて、2023年5月から最初の週刊誌報道がなされるまでのタイムラインを見ていきたいと思う。
② 2023年5月からのタイムライン
- 2023年5月7日、フジテレビ編成幹部A氏が中居氏との会食をセッティング
※場所は都内の飲食店。
※参加者はA氏のほか、中居と人気男性タレント。
※接待要員として他局の若手女性アナウンサーやフリーの若手女性アナウンサーらが招集された
※「男性タレントが性行為を懇願するような発言をするなど、ボディータッチは当たり前のかなり砕けた雰囲気だった」と1月27日付のスポーツニッポンが報じた
※2月21日、TBSテレビは社内調査の結果として「TBSテレビのアナウンサーが参加していたことを確認」したと明かした(「フジテレビ編成幹部から直接誘われて参加した」とのこと) - 5月31日、中居氏の自宅マンションでバーベキュー
※参加者は主催者の中居氏に加え、笑福亭鶴瓶、ヒロミ、フジテレビ編成幹部A氏、X子さん、TBSテレビの男性社員2名を含む約10名
※バーベキューの様子について、「場を仕切るA氏がX子さんや女性アナに指示し、X子さんを含む若い女性はタレントの横に座らされた」と1月25日付の週刊文春が報じた
※バーベキューのあと中居氏とA氏、X子さんの3人が残り、近くの寿司屋へ(この場で「2人が付き合えばいいのに」とA氏が発言し、X子さんは断り切れず中居氏と個人的な連絡先を交換した) - 6月初旬、中居氏とX子さんの間でトラブルが発生
※中居氏から「A氏を含めた大人数で食事をしよう」と誘われていたX子さんは、「Aさんがセッティングしている会の延長」との認識で参加したが、悪天候でほかの全員が参加できなくなり、中居氏と2人だけのマンションで被害に遭った(1月8日発売の週刊文春より) - 6月某日、X子さんがフジテレビに被害を報告
※X子さんは仕事上つながりの深い佐々木恭子アナに報告。その後アナウンス室長(当時)のB氏と、佐々木アナ、医師を交えて4人で話し合い、その報告が編成制作局長(当時)のC氏に上がった(1月8日発売週刊文春より) - しばらくして(時期は不明)中居氏がフジテレビにトラブルについて説明
※中居氏は「100%、同意だった」と説明。さらに「行為後に彼女から交際を確認されるようなことを言われて言葉を濁してしまった。それで関係がこじれたのかも」と。以上は「フジ元幹部」の証言だが、この中居氏側の主張に関してメールなどの証拠はなく、加えて中居氏の代理人弁護士は「実際には交際を確認するようなやり取り自体なかった」と中居氏の説明を否定した(2月27日発売の週刊文春より) - その後フジテレビはX子さんの心身のケアを優先
※その一方で中居氏を咎めることはなく『まつもtoなかい』の放送は続けた - 2024年1月8日、『まつもtoなかい』のもうひとりのMC松本人志が芸能活動の休止を発表
※週刊文春が報じた自身の性加害疑惑を事実無根とし、裁判に注力するため - 2月4日、この日の放送から番組名を『だれかtoなかい』にリニューアル
- 8月、X子さんが「フジテレビの仕事を離れる」ことを港浩一社長(当時)に報告
- 11月8日、松本人志が文藝春秋に対する名誉毀損の訴えを取り下げる
- 12月12日、フジテレビが翌年3月をもって『だれかtoなかい』を終了すると発表
- 12月19日、女性セブンが本事案の最初の記事を掲載
さて、問題の核心に迫る前に、あの10時間会見のあとに起きた出来事を3点、一応列挙しておく。
週刊文春が本事案で問題になっている会食について、第1弾の記事でフジテレビ社員のA氏が誘ったと報じた点を「お詫びして訂正いたします」と謝罪した(1月28日)。
遠藤龍之介フジテレビ副会長が、3月末をめどに副会長を辞任する意向を示した(1月28日)。
フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ両社の最高権力者とされる日枝久取締役相談役が、取締役の人事や報酬などについて助言や提言を行う経営諮問委員会の委員を辞任した(2月27日、念の為だが、日枝氏は取締役を辞任したわけではない)。
3、問題の核心は何か?
ご覧のようにいくつもの問題が絡み合うこの不祥事。
問題の核心というべき次の3点について、掘り下げていく。
- 人権の侵害(性加害)はあったのか?
- 番組はなぜ継続されたのか?
- この問題はなぜフジテレビで起きたのか?
① 人権の侵害(性加害)はあったのか?
件(くだん)の10時間会見では、フジテレビサイドから何度も「人権侵害の恐れがある事案」という表現がなされたが、逆に言えば「あれは人権侵害だった」との表明は一度もなされていない。
両方の当事者から話を聞くことのできる唯一の立場であったフジテレビだが、「人権侵害だったかどうか」のジャッジは保留したままだ。
本当にわからないないのか、保留しておいた方が自分たちのためだと判断したのか‥‥。
一方で、同意か不同意かで2人の説明が食い違っていたということなので、そうしたことから連想される行為が行なわれたこと自体は否定していない。
少し横道に逸れるが、このことを認める発言をしたのは遠藤副会長である。
会見の冒頭、フジテレビサイドから簡単な経緯説明がなされたのだが、その中に「事案発生後に中居氏本人からは違う説明を受けた」という内容が入っていた。
会見の中盤になって、そのことに触れた記者が「同意か不同意かということですか?」と質問し、否定をすればウソになると思ったのか、「そういうことです」と答えたのだ。
会場が紛糾したのはその数十分後だ。
舞台下手の司会者席の方から何やら紙が差し込まれ、それを見た遠藤副会長が、「先ほどの発言は取り消します」と言ったのだ。「取り消す」といっても、放送や配信で全国に流れてしまった後だ。紛糾しないはずがない。
食い下がる記者たちに、「社として言ってはいけないことを、私が言ってしまったということです」と副会長は弁明したが‥‥。
数々の不祥事を受けた会見で、自己保身、自社保身を図る経営陣に厳しく切り込んできた報道機関の一員でありながら、立場が変わればこんなにも不条理な自社保身を図るのか‥‥。
そうした思いを強くしたのは、会場に居合わせた記者たちだけではないだろう。
メモ紙を差し入れたのはいったい誰なのか?
弁護士か、フジテレビの広報担当者か、まさか日枝氏ではないだろうが‥‥。
さて、フジテレビについてはまた後ほど触れるとして、いまはこの項の本題に戻ろうと思う。
問題は人権侵害があったのか、性加害があったのか、つまり、同意があったのか、である。
男性が同意があったと主張し、女性がなかったと主張する場合に、たいていは男性がウソをついている。そう断じることは、偏見と言われるだろうが‥‥。
今回は、次の2点が何よりも雄弁に物語っている気がする。
- 中居氏のフジテレビに対する説明を中居氏の弁護士は事実と違うと証言した(週刊文春による:「2023年5月からのタイムライン」にて前述)
- 中居氏が週刊誌の報道と戦うことなく早々に引退を発表した
「性加害があった」という前提に立って考えれば、まず指摘しなければならないのは、中居氏の人間性の問題である。「みんなで食事するから」と誘っておいて、「みんな来れなくなったから」と2人きりになり、無理やり‥‥。それだけでなく、彼女がフジテレビに報告したと知り、「100%、同意だった」とか「行為後に彼女から交際を確認されるようなことを言われて言葉を濁してしまった。それで関係がこじれたのかも」とウソの説明。
2重3重に彼女を冒涜している。
卑劣極まりない上に自分に甘すぎる‥‥芸能界はなぜ、このような人間を作り出してしまうのか?
彼がかつて所属した芸能事務所も創業者の性加害で世界を騒がせたばかりだというのに‥‥。
そんな中居氏に対しては、もうすでに社会的制裁を充分に受けた、とする考えもあるかもしれないが、一方で、引退という社会的制裁だけで終わってしまっていいのか、という考えもあるだろう。
ただし、X子さんとの示談の条件の中に「刑事事件にはしない」という項目が入っている可能性もあり、これ以上何かが起きるという可能性は極めて低いと言えるだろう(本件は2023年7月13日の改正刑法施行直前の事案であり、有罪へのハードルは比較的高いと言えるが、刑事事件の捜査対象となること自体が加害者への戒めとなり、抑止効果が働くだろう、という観点からの指摘である)。
では、フジテレビはどうだろうか?
「性加害があった」という前提に立った場合(というか、実際その可能性は非常に高い)、フジテレビの一連の対応はどのように評価されるのか?
「X子さんの心身のケアを優先した」と仕切りに自己正当化を図るフジテレビサイドだが、加害者である中居氏への対応が充分だったと見る視聴者はどれほどいるのか?
テレビ局として真っ当な対応だったと見るスポンサーは、上場企業の中核子会社として問題のない対応だったと見る投資家はどれほどいるのだろうか?
そう考えていくと、フジテレビはジャッジを保留せざるを得なかった、というのが真実ではないのか。
② 番組はなぜ継続されたのか?
中居正広と松本人志のMCでスタートした『まつもtoなかい』は、2023年4月からレギュラー化された日曜21時放送のトークバラエティ。4月のレギュラー化から2ヶ月ちょっとで本事案のトラブルが発生したことになる。
いったいなぜ、今日(こんにち)までこの番組は継続されたのだろうか?
フジテレビ港社長は、「急に番組を打ち切りにすると臆測が生じることを懸念したため、終了のタイミングを探っていた」と会見で語り、トラブルの発生当時フジテレビの専務であった関西テレビ大多社長も、「打ち切りにすることが女性にどのような影響があるか考えた」と説明し、「中居氏を守ろうという意識はなかった」とした。
この2種類の説明には、大きな違和感を感じる。
別の言い方をすれば、本当とは思えない。何かを隠しているに違いない。
憶測が生じて困るのは、本事案の発覚を恐れた(そこからX子さんの特定につながるとまずい)ということだろうが、会見でも質問があったように、約半年後の2024年1月8日に松本人志が芸能活動の休止を発表しても番組は継続した。このときに番組を打ち切りにすれば憶測が生じる心配はなかったはずだが、番組は続いたのだ。
港社長の「臆測が生じることを懸念したため」という説明は真実ではないだろう。
では、「打ち切りにすることでX子さんにどんな影響があるかを考えたために打ち切りにできなかった」というもうひとつの説明はどうだろうか? その場合、当然、「打ち切りにしないことでどんな影響があるか」についても考えたはずだと思うが‥‥。
X子さんは、自分は性加害の被害者で中居氏はその加害者だと訴えたはずで‥‥、その彼女から見て、加害者が番組を打ち切られて出入り禁止にされた場合と、何のお咎めもなくのうのうと番組を続けている場合とでは、どちらがより辛い状況だろうか?
そう考えていくと、彼女の心のケアのために番組を継続したと言うからには、明確に「彼女が継続を望んだ」という説明がなければいけないだろう。その説明があれば、誰もが納得できる。しかし、誰のどの会見でも、そうした説明はなされなかった。
間違いなく彼女は望んでいなかったので、そんな説明はできなかったのだ。
10時間会見では、番組終了を決めた経緯について、港社長は「8月に彼女が仕事を離れることになり、それを受けて11月に番組の終了を決断した」と何度も繰り返し説明していた。まるで、彼女へのケアがいらなくなったので番組を打ち切ることができた、と言わんばかりであった。
しかし、それほど心配していた彼女の心のケアを、仕事を離れた途端にもういらないと解釈できる神経は何なのか?
そして、なぜ8月から3ヶ月も経った11月に決断したのだろうか?
この3ヶ月のタイムラグは、いったい何なのか?
おそらく、番組の終了を決めたのは本当に11月で、フジテレビ社内にそのことを知る人はたくさんいるので、港社長としては「11月に決断した」ということは言わざるを得なかった。だとすると‥‥。
ここは、11月に終了を決断した別の理由があって、それを隠すために、後付けでX子さんが仕事を離れたことを理由として持ち出した、と考えるのが自然ではないのか?
その別の理由とは?
前述の「2023年5月からのタイムライン」の最後の4行を、もう一度見ていただきたい。
- 8月、X子さんが「フジテレビの仕事を離れる」ことを港浩一社長(当時)に報告
- 11月8日、松本人志が文藝春秋に対する名誉毀損の訴えを取り下げる
- 12月12日、フジテレビが翌年3月をもって『だれかtoなかい』を終了すると発表
- 12月19日、女性セブンが本事案の最初の記事を掲載
11月といえば、松本人志が訴えを取り下げたタイミングだ。
おそらくフジテレビには松本サイドから事前に情報が入っていて、このニュースのあとの世間の反応をうかがって、あわよくば番組への松本の復帰を、と画策していたのではないのか?
しかし世間の反応が芳(かんば)しくなかったので、松本の復帰が望めないのならと、終了を決断した。
そういうことではないだろうか?
フジテレビは絶対に認めないだろうが、番組を継続した理由は視聴率。
X子さんへの配慮というのは理屈に合わず、詭弁と言われても仕方がない。
③ この問題はなぜフジテレビで起きたのか?
振り向けばテレビ東京‥‥。
そんな、考えてみればテレビ東京には大変失礼な言い方で、視聴率の長期低迷傾向を揶揄されて久しいフジテレビだが、1980年代にはテレビ界の頂点に君臨した時期もあった。
『オレたちひょうきん族』『笑っていいとも!』に代表されるバラエティは、それまでのテレビ番組にはない「ユルさ」で当時の若者たちの支持を集めた。そこにあったのは、他局のような作り込んだ笑いではなく、もっと自由な、段取り無視の、失敗さえも笑いに変えるような、ハプニング重視でエネルギッシュな番組進行だった。
そうした番組で重要視されたのは、リハーサルを重ねて何が面白いのかを探るような能力ではなく、ぶっつけ本番で発生した出来事を笑いに変えていく、タレントたちの瞬発力や個性だった。いきおい、そうした番組ではタレントへの依存度が高くなる。俗にいう「タレントにおんぶに抱っこ」状態の番組作りが主流となっていく‥‥。
そんなフジテレビの黄金時代を編成局長として過ごし、1988年に50歳の若さで社長の座に着いたのが現在の取締役相談役、日枝久氏である。
その日枝氏が視聴率低迷傾向から脱するために白羽の矢を立てたのが、かつての黄金時代を現場の若手として経験した港浩一社長。
港社長体制のフジテレビは、過ぎ去った黄金時代を懐かしむように、深夜の生放送に女子大生を登場させ、平日のお昼にバラエティ番組を編成した。それは傍(はた)から見れば、自分の若い頃の見た目にこだわって年相応に老けることができない元アイドルみたいで、ちょっとイタイ感じを漂わせていたのだが‥‥。
本記事に登場するような、いわゆる「大物」タレントさえMCにしておけば‥‥という発想も、華やかなりし黄金時代から脈々と受け継がれたフジテレビのDNA(他局にも同様の傾向は見られるが、タレント依存による最も輝かしい成功体験をもっているのは、フジテレビと言えるだろう)。そのDNAは、あのA氏にも‥‥。
本事案の引き金になったフジテレビ社員A氏による中居氏への接待。
もちろん、ここにはA氏の個人的な資質も影響していると見るべきだが、フジテレビのDNAが及ぼしている影響も無視することはできないだろう。
トラブル当日の会食にA氏が関与していないことをことさらに強調するフジテレビであるが(そして「A氏が誘った」と読める記事を掲載した文春にも落ち度はあるが)、前述の「2023年5月からのタイムライン」をご覧いただければわかるように、「関与していない」のは当日だけで、A氏がそこまでの「道筋」をつけたことは疑いようがないのである。
そしてトラブルのあとの番組継続の判断。
大物タレントを手放したくない、というフジテレビのDNAが、ここでも影響しているように見えるのだ。
つまり、この問題がフジテレビで起きた要因のひとつはフジテレビのDNA、であることは確かなのだが‥‥。
肝心なのは、そのDNAがこの時代まで進化しないで残り続けたのはなぜか‥‥ということだ。
DNAというものは、世代交代のたびに新しい遺伝情報と混ざり合い、絶えず変化(進化)していくものであるはずなのに‥‥?
ところで、今回の問題でもうひとつ特徴的と言えるのは、多くの人が感じているとおり、フジテレビの詭弁だ。
それも、詭弁ということが大変わかりやすい詭弁。
例えば、中居氏とX子さんのトラブルは「人権侵害の可能性がある事案」。
番組を継続した理由は「X子さんに配慮したから」。
10時間会見で繰り返し何度も出た質問は、なぜ日枝氏は会見に出ないのか、というもの。
その度に解答したのは会長を辞任した嘉納修治氏だったが、彼は毎回同じ答えを繰り返した。いわく、「本会見はフジテレビの業務執行の問題について開催したもので、日枝は業務執行にはタッチしていないため、この場でお答えする立場にはありません‥‥云々」
これもまた、上に挙げたふたつの詭弁に匹敵するような、わかりやすい詭弁である。
日枝氏の肩書きは取締役相談役である。嘉納氏の言うように「業務執行にタッチしない」なら、取締役を外れるべきであるが、実際には週刊誌等で報じられるように、いまも取締役会の際には会議室の中心に座り大いなる発言力を行使しているようである。
記者たちがまるで納得していないことを理解していながら、嘉納氏は毎回このような詭弁を弄して、なぜ役目を果たし終えたような顔で座っていられたのか? 真摯に説明責任を果たすことが、本来求められている役割であったはずなのに‥‥?
- なぜDNAは昔のまま残り続けたのか?
- なぜ詭弁を弄して平気でいられるか?
このふたつの疑問に対する答えは、たったひとつ。
フジテレビの幹部たちは、視聴者やスポンサーの方を向かず、日枝氏の方を向いているから。
これが答えである。
日枝氏の絶対権力者としての存在があまりに大きく、幹部となればなるほど人事権を握られ、気に入られなければ上にいけない(もしくは、首を切られる)という仕組みの中で、幹部たちは顔色をうかがい、冒険をしなくなる。かつての成功例に倣っておけば、トンチンカンな決断をしたと責められることもない‥‥いわば、自己保身、保険のためのDNA保存。昔のやり方‥‥、大物タレント‥‥。
そんな絶対権力者の日枝氏が、社長でも会長でもなく、平の取締役だということ自体が大きな詭弁。経営陣の世代交代を進めているように見せて、実は87歳の日枝氏が実権を握っているこの構造が、詭弁。取締役にして相談役、その肩書きが詭弁。社長会長はもちろん取締役の人事を握っていると言われる絶対権力者の日枝氏が、後輩たちに会見を任せている、その姿が詭弁。
トップが詭弁を弄しているので、下の人たちがこうなるのも、当たり前と言えるかもしれない。
10時間会見で最も説明責任を果たそうという意志を感じたのは遠藤副会長だったのだが、前述の発言取り消し事件の際、「社としては取り消すべきと判断したようで、紙が回ってきたが、私は一放送人として、一度口にした発言を取り消すつもりはない」と言うこともできたと思う。民放連の会長も務める身であれば、なおさらのことだ。
しかし実際には、日枝一強体制の下でそのような放送人は育たなかった、ということなのだろう。
残念なことであるとともに、これが、この問題がフジテレビで起きた理由のすべてである。
筆者まだ若いころに出会った会社の先輩が、こんなふうに言っていたのを思いだす。
会社の金を一番上手に泥棒した奴が最終的に社長にまで上り詰め、会社の金をもっと自由に使うようになるんだ。
都内にある日枝氏の豪邸は、土地だけで7億円と言われる。
サラリーマン社長だった日枝氏が、社長就任後37年で蓄えた財産の、ほんの一部ということだろう。
それにしても、37年とは‥‥。
あのプーチンがロシアの大統領になってから、今年で25年‥‥。
有り余るほどの財を築いてもなお、その座に居座ろうとする強欲。
詭弁を弄してまで自己を正当化し続ける傲慢。
2人に共通する資質である。
4、これからどうなる?
3月末とされる第三者委員会の結論が、ここまで述べてきたことにどこまで迫れているか、ということが大きいだろう。スタート当初は、3月までに結論を得るのは至難の業、できたとして中間報告ではないか、とも言われていたこの調査。
一部報道では、フジテレビ社員から記名で回答を集めているとされている。外部スタッフへの調査なしには実態解明は困難とも言われるが、果たしてどこまで核心に迫ることができるのか?
そして、日枝独裁体制の問題点を正しく指摘する報告書が出てきた場合は、それを受けて経営陣が、特に日枝氏が進退についてどう判断するのか?
日枝氏が辞任しない場合には、6月の株主総会に向けて、目の離せない展開が続くことになる。
5、まとめ
- 中居氏とX子さんとの密室のトラブルがすべての始まり
- フジテレビはこの(性加害)トラブルを隠蔽して中居氏を番組に起用し続けた
- 「番組を続けた理由はX子さんへの配慮」と説明するが、それは詭弁
- 本当の理由は視聴率ではないか(松本人志の復帰を画策か)?
- フジテレビの日枝独裁体制が根本原因
- タレント頼りで性上納まがいの接待が横行
- 詭弁を弄して自己正当化を図る幹部たち
- 日枝氏がそうしたことの責任を取らなければ、株主総会は大荒れか?
最後に、本事案の核心部分とテーマが重なる映画を3本紹介したい。
1本目は、性加害が人の人生に与える痛みの激しさとその影響の悲惨さを、女性監督が鮮烈に描き出した傑作。
2本目は、華やかな芸能界の裏側に潜む性加害の罠を、ホラータッチで浮かび上がらせてた秀作。
そして、一国の独裁者も一企業の独裁者も同じように傲慢で強欲であることはこれまで見てきた通りだが‥‥3本目は、そんな「金持ちほど欲深い」を絵に描いたようなブラックコメディー。
いずれも、一見の価値ある作品だ。
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