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美少女パワー炸裂!忘れじの胸キュン映画5選

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テーマ別5選の森

※以下の記事は作品の魅力を紹介するため最小限のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

☆ロミオとジュリエット

  • 『ロミオとジュリエット
  • 脚本
    フランコ・ゼフィレッリ/フランコ・ブルサーティ/マソリーノ・ダミコ
  • 監督
    フランコ・ゼフィレッリ
  • 主な出演
    レナード・ホワイティング/オリヴィア・ハッセー
  • 1968年/イギリス・イタリア/138分

あらすじ

中世イタリアの都市ヴェローナ。
ここには代々憎しみ合う二つの名家があった。キャピュレット家とモンタギュー家である。
モンタギュー家のひとり息子ロミオは、戯れに仮面をつけて忍び込んだキャピュレット家のパーティーで、ひとり娘ジュリエットを見て恋に落ちる。

彼女の部屋のバルコニーでの猛アタックを経て、相思相愛の関係になる2人。
修道僧ロレンスの手引きで密かに結婚を誓うが、その喜びも束の間、広場へ出たロミオは両家のいざこざに巻き込まれ、ジュリエットの従兄であるティボルトの命を奪ってしまう。

事件の責任を問われ、領主から追放処分を命じられるロミオ。
絶望の淵に突き落とされたジュリエットにさらに追い打ちをかけたのは、父親が決めてきた縁談だった。拒否することは許されなかった。
途方に暮れるジュリエットは、修道僧ロレンスに助けを求めるのだが‥‥。

出典:ポスターより

O・ハッセーの可憐さが世界を魅了した

ご存じシェイクスピアの戯曲で知られる名作をフランコ・ゼフィレッリが丹念に映像化して、第41回アカデミー賞で作品賞と監督賞にノミネートされた秀作です。
古今東西、本戯曲の映像化作品は両手でも数えきれませんが、その中にあって、いまも根強い人気を誇る古典的な恋愛映画だと言っていいと思います。

シェイクスピアらしいセリフ回しや舞台劇らしい一人芝居をふんだんに取り入れつつ、映像作品としても見応え充分なカメラワークやカット割りで飽きさせません。
特にストーリーの転換点となる広場での決闘シーン。レナード・ホワイティングら若手俳優陣の熱演もあり、恋愛映画だということを忘れるような出来栄えになっています。

そんな本作でヒロインを演じているのが、オリヴィア・ハッセー。
アルゼンチン生まれですが、2歳のときに両親が離婚。その後母の故郷であるイギリスへ渡ると、ドラマスクールで演技の勉強を始め、ロンドンの舞台に出演しているときに本作のゼフィレッリ監督に見出されます。

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ロミオよりもかなり遅れてやってくる彼女の登場シーン。
ゼフィレッリ監督は、それまで散々焦らした挙句、彼女の父親が花婿候補の貴族の男と2人で、中庭を挟んだ向こうの建物の窓にいるジュリエットを見る、というシチュエーションで、ようやくその可憐な笑顔を観客に紹介するのですが‥‥。

そのときのカメラワーク‥‥、中庭の様子からかなり強引に2階の窓へズームしていくそのカメラワークは、言ってみれば、この作品の一番の売り物は彼女である、と。監督がそう宣言しているかのような、そんな紹介カットとなっているのです。

そのシーンからほどなくしてやってくるキャピュレット家の舞踏会の場面は、本作の評価を決定づけたと言ってもいいほどの名シーンとなりました。

大勢の人の輪の中で、ロミオが美しい少女(ジュリエット)に気づき、人の間を縫うように追いかけながら、彼女を見つめ続けます。
無邪気な笑顔で楽しそうに踊るジュリエットは、やがて自分を見つめる男に気づきます。驚き、警戒し、距離を取ろうとして人の間を縫うように移動しながら、その怪しい男を観察します。

長いシーンですがセリフはなく、途中からはほとんど2人のアップの連続です。しかも、ロミオは仮面をつけていてその表情はよく見えません。おのずから観客は、ジュリエットの微妙に変化するさまざまな表情をじっと見つめることになります。まるで、ロミオになったかのように‥‥。

恋への憧れ、異性への恐れ、でも仮面の男の正体を知りたいという抑えがたい欲求、そしてやはり、忍び寄る未来への漠然とした不安‥‥。
それらを刻々と移りゆく表情の中に映して、美しく愛らしい輝きを放ちつづけるひとりの少女を‥‥。

こうしてこのシーンによって、世界中の観客が、ジュリエットを演じるこの新人女優に恋をしたのです。まるで、ロミオになったかのように‥‥。
オリヴィア・ハッセーの可憐さが世界を魅了した瞬間でした。

撮影時15歳の彼女は、まさに15歳らしい溌剌とした肢体で悲劇のヒロインの心の揺れを見事に演じ切り、監督や製作陣の期待通りに(いや、おそらくはそれ以上に)、幾多の年月を生き延びる力をこの作品に与えました。

日本公開時にも本作は大きな話題になりましたし、その後歌手の布施明と結婚していた時期もあることで、何か勝手に親しみを覚える日本人も少なくはないという気がするオリヴィアですが‥‥。
この華々しいデビューに比べて、その後の活躍がいまひとつだったのはとても意外で長年不思議に思っていたところ、2022年の暮れに驚くようなニュースが飛び込んできました。

彼女とロミオ役のレナード・ホワイティングが、製作会社のパラマウント・ピクチャーズを提訴したのです。本作の寝室でのシーンを、事前に受けていた説明と違って全裸で演じさせられたのは、当時16歳と15歳だった2人に対する児童虐待であり、性的搾取にあたる、という主張です。

訴えた2人はすでに70代。
映画の完成から50年以上も経ってからの提訴は、衝撃的な出来事でした。

しかし、「#MeToo」運動などもなかった時代に、10代にして不本意なヌードシーンを撮影せざるを得なかった心の傷は、その後の役者人生に暗い影を落とし続けたのかもしれません。
考えてみればロミオを演じたレナードも、その後パッとした活躍が見られませんでした(ちなみに、ゼフィレッリ監督はゲイであることを公表していたそうです)。

この残念な秘話が明らかになってからは、「それでも映画の価値は変わらない」とすまして言うのも、そういう(役者の意思を尊重しない)制作体制を肯定しているようで、なんだか気が引けてしまいます。

ですから、これは、そんな誤解を受ける可能性があることも承知した上で、あえて言うのですが‥‥。ニーノ・ロータの書き下ろしたテーマ曲が映画音楽を代表する名曲と語り継がれるように、10代の悲恋を描いた純愛映画として、本作の魅力が色褪せることはけしてないと言えるでしょう。

なぜなら、15歳のオリヴィア・ハッセーが本作で放った輝きは、それほど別格だったと思うからです。

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☆青い珊瑚礁

  • 『青い珊瑚礁』
  • 脚本
    ダグラス・デイ・スチュアート
  • 監督
    ランダル・クレイザー
  • 主な出演
    ブルック・シールズ/クリストファー・アトキンズ
  • 1980年/アメリカ/105分

あらすじ

サンフランシスコへ向けて太平洋を航行中のイギリスの帆船で火事が発生する。
父とともに乗船していた8歳のリチャードは、7歳の従妹エメラインと料理係のパディの3人で小船に乗り、急いで避難する。

しかし濃霧のため父たちの小舟と合流できなかった3人は漂流することになり、やがて小さな島にたどり着く。上陸した3人はこの島で食べ物を探し、救助船が通りかかるのを待つことにする。パディが先生になって島での暮らし方を幼い2人に教え込む。3人のサバイバル生活が始まったのだ。

しかし救助船はいつまでたっても現れなかった。
やがてパディは亡くなり、月日は流れ‥‥。
幼かったリチャードとエメラインは、逞しい少年(クリストファー・アトキンズ)と美しい少女(ブルック・シールズ)になっていたのだった‥‥。

出典:DVDパッケージより

エデンの園のおとぎ話

ロミオとジュリエットの純愛には、家と家との対立という、大人たちの事情が立ちはだかりました。それに対して本作は、そうした大人たちの事情から物理的に切り離されてしまった、極めて特殊な少年少女の物語。
描かれているのは思春期特有の葛藤と、戸惑いと、純愛。そのほかにあるものといえば、青い海と白い砂。

ヘンリー・ドヴィア・スタックプールという作家が1901年に発表した小説『The Blue Lagoon』を原作として、フィジーの島々で撮影されました。

ヒロインのエメラインを演じたブルック・シールズは撮影時14歳。
マンハッタンで実業家の父と女優・モデルなどをしていた母の間に生まれ、幼少期からモデルとして活躍。両親の離婚を経て母のマネジメントによる露出は加速し、映画の世界へ。

ルイ・マル監督がアメリカで初めて撮った『プリティ・ベビー』(1978年)で、11歳にして娼婦を演じて(役の上では12歳)世界中にセンセーションを巻き起こし、それに続く本作と『エンドレス・ラブ』(1981年)の連続ヒットによって、一躍世界のトップスターに上り詰めます。

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14歳らしい幼さを残したスタイルとは裏腹に、大人びて整った顔。
共演のクリストファー・アトキンズは撮影時18歳なのですが、顔だけ見ているとそれほど歳の差があるような気はしません。

そのアンバランスさが何にも勝る彼女の魅力であり、本作の企画自体も、そんな彼女の魅力を100%あてにして成立している。そう言い切っていいと思います。

肌の露出もいとわないプロ根性は大したもの。生まれついての女優‥‥。
本作を見れば、誰もがそう感じることでしょう(不自然に顔が映らないようにしたカットが多々あり、吹き替え=ボディダブルも多用されていることがわかりますが、それにしても本人の露出も多いですよね)。

しかし、『プリティ・ベビー ブルック・シールズ』(2023年)というドキュメンタリーの中で、母親の支配下にあったティーンエージャーまでの自分を振り返って、彼女はこんなふうに言っています。
「自分は、割り切るということを知っていた」

本作の監督であるランダル・クレイザーについては、「監督は、私の性の目覚めを売りたがっているように感じた」とコメントしています。
また、「私はただの駒で、商品だった」とも。

内容的には、大人たちの事情から物理的に切り離された少年少女の物語である本作ですが、その撮影の裏側は、大人たちの事情にまみれていたということなのかもしれません。

さて、本作のタイトルを聞けば、同じ年にリリースされた松田聖子の同名のヒット曲を思い浮かべる方は多いと思いますが、天邪鬼なモリゾッチの頭には、なぜか「俺たちの祭」という曲が浮かんできます。
これは本作とはなんの関係もなく、1977年の同名のテレビドラマの主題歌で、小椋佳の作詞・作曲、中村雅俊の歌唱でヒットした曲です。

君を連れて小舟を浮かべ、見知らぬ遠い島へ行きたい‥‥。そんな夢を見る男の歌なのですが、こんな歌詞で終わるのです。
「遠い島では別れのない愛があるそうな」

本作が描いているのは、まさにそんな島。
旧約聖書に描かれたアダムとイヴの物語のように。
戸惑いながら互いを受け入れた2人にはやがて子供が。

待ちに待った救助船が現れても、すでに2人は見つけてもらう努力もせず‥‥。
船は去り、赤ちゃんとの3人の暮らしがずっと続くのかと思った矢先。
禁断の赤い実を食べることで幕引きが訪れるとは‥‥。

エデンの園のおとぎ話。
海の青さが眩しいです。

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☆小さな恋のメロディ

  • 『小さな恋のメロディ』
  • 脚本
    アラン・パーカー
  • 監督
    ワリス・フセイン
  • 主な出演
    ジャック・ワイルド/マーク・レスター/トレイシー・ハイド
  • 1971年/イギリス/106分

あらすじ

ロンドンの公立学校に通う引っ込み思案な少年ダニエル(マーク・レスター)は、ある日の放課後、バレエの練習をするひとりの女子生徒に釘付けとなる。
彼女の名は、メロディ(トレイシー・ハイド)。ダニエルと同学年の11歳の少女だった。

オマセで不良っぽい親友のトム(ジャック・ワイルド)に冷やかされるが、ダニエルの初恋は止まらない。引っ込み思案で声をかけることができない割に、校内でただひたすら彼女を見つめ続けるダニエル。つまるところ、誰が見ても「あ、こいつあの子が好きなんだ」状態。
となれば当然、メロディも気づかないわけがない。

音楽室で偶然2人きりになったのをきっかけに、2人は急接近。
放課後は毎日いっしょに過ごすようになり、ついには学校をサボって海水浴に出かけ、そのことがバレて校長先生から大目玉を喰らう。トムからもしつこくからかわれたダニエルは、教室で殴り合いのケンカまでする始末。

だが、そのあとダニエルとメロディの口から出てきた言葉は、さらに周囲を驚かせるものだった。
結婚したい。それが2人の望みだというのだ。
さらに、あきれて頭ごなしに押さえつけようとする教師や親に、「なぜ11歳では結婚できないの? いっしょにいたいだけなのに?」と問いかけるのだった‥‥。

出典:DVDパッケージより

すべての人が通る懐かしくて尊い道

ビージーズの「イン・ザ・モーニング(In the Morning)」が流れ、眠りから覚めようとするロンドンの街並みの遠景で始まる本作のオープニング。
胸躍らせながら観た頃を懐かしく思い出します。「人生の朝」という歌詞が出てくるように、まさにこれから人生が始まるという、少年少女の甘酸っぱい物語を予感させる、静かで素敵なオープニングでした。

学校の帰り道にある墓地でのデートは微笑ましいシーンです。
ある夫婦の墓石に刻まれた50年という数字を見て、メロディは、そんなに長く愛することはできるのかと訊くのですが、ダニエルは簡単に答えます。もちろんさ、もう1週間愛してる。

そう言いながらひとつのリンゴを2人で分け合ってかじる様子は、アダムとイヴのエデンの園を想起させます。「好き」という気持ちに素直に従う彼らは、すべての「人」の始まりの姿であると‥‥。

本作で初めて脚本を担当したアラン・パーカーは、当時26歳。のちにハリウッドへ渡り、『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)、『フェーム』(1980年)などの監督として知られるようになります。

出演者に目を転じると、ジャック・ワイルドとマーク・レスターは1968年の映画『オリバー!』ですでに共演しており、その人気子役コンビに新人のトレイシー・ハイドを組み合わせたのが、本作の座組みということになります。
ちなみにオマセな同級生に見えるジャック・ワイルドは撮影時すでに17歳。マーク・レスターとトレイシー・ハイドは、撮影時12歳と11歳、ほぼ役柄通りの年齢でした。

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雑誌のモデルをしていたトレイシー・ハイドは、オーディションでこの役に抜擢されます。8歳のときに習い始めたバレエは、本作の役にも生かされていますね。

昼間からパブで飲んでいる父親に小遣いをもらいに行くシーン。
廃品回収業者と物々交換でもらったガラス瓶入りの金魚を大事に持って歩くシーン。
そんなさりげない日常の描写にも、素朴で飾らない年齢相応の愛らしさが光っています。それこそが、とびきりの彼女の魅力。ダニエルが夢中になるのも、とてもよくわかるというものです。

そんなわけで、トレイシーの抜擢が本作の魅力を大きく膨らませたことを、疑う人はひとりもいないと思います。

さて、小さなアパートに祖母と両親と暮らすメロディの家は、いわば労働者階級(ちなみに、トムの家も豊かではない様子)。それに対してダニエルの家は大きくて、車も買える中産階級。
ロミオとジュリエット的な中世のしがらみや障壁に変わって、20世紀のロンドンにあったのは経済的な格差の壁。のみならず、いつの時代も変わらない、古い価値観を押し付けようとする大人たちという壁。

しかし、それらの壁をものともせず、無心で突き進んでくのがメロディとダニエルなのであり‥‥、本作が多くの支持を集めた理由もそこにあると言えます。

さらに、「メロディ・フェア(Melody Fair)」、「若葉のころ(First of May)」などビージーズの楽曲が、そんな彼らを後押しするように、優しい旋律を響かせます。

そしてクライマックスは、授業を抜け出して決行される2人の結婚式。
最初は彼らのことを冷ややかに見ていたクラスメイトもついには応援する立場となり、クラス全員で学校裏の空き地へ。それに気づいた教師や父兄たちは彼らを阻止するために空き地へ急ぐのですが、実験好きの生徒が作った手製の爆弾がタイミングよく爆発して‥‥。

大混乱となる中、最後はトムの助けで廃線となった線路にたどり着いたメロディとダニエル。そこに残った手漕ぎのトロッコに乗って、2人はその場を離れます。まっすぐに続く線路を、どこまでも進んでいきます。2人だけで、全身の力を使って、代わりばんこにトロッコを漕ぎながら、どこへ続くとも知れぬ線路を、ただ夢中で進んでいく‥‥。

それは、すべての人が通る懐かしくて尊い道。
そんな気分が押し寄せてくるエンディングです。

メロディを演じたトレイシー・ハイドは、1980年代に女優業を引退して一般人になったと伝わります。本作で見せたとびきりの、彼女特有の魅力のままに、素朴で飾らない生き方を選んだということなのもかもしれませんね。

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☆レオン

  • 『レオン』
  • 脚本・監督
    リュック・ベッソン
  • 主な出演
    ジャン・レノ/ナタリー・ポートマン/ゲイリー・オールドマン
  • 1994年/フランス・アメリカ/133分

あらすじ

ニューヨークで孤独に生きるレオン(ジャン・レノ)は、プロの殺し屋である。
無口で無趣味で、暇さえあれば肉体を鍛え、鉢植えの植物だけを友達のように可愛がって生きている。

ある日アパートの隣室に住む一家が皆殺しに遭う。麻薬密売組織の内紛が原因だ。
買い物に出ていたひとり娘マチルダ(ナタリー・ポートマン)だけが難を逃れるが、帰ってきた彼女は開いているドアから中を見て事態を一瞬で把握。そのまま自室を通り越してレオンのドアを叩く。室内にまだマフィアの姿があったからだ。

関わり合いになりたくないレオンだったが、必死に助けを請うマチルダを見ると放っておけなかった。ドアを開けて、招き入れる。

家族を皆殺しにされたマチルダはレオンしか頼る者がなく、始めは関わりたくなかったレオンも無下に追い出すことはできず‥‥こうして、中年の殺し屋と12歳の少女の共同生活が始まった。
やがてマチルダはレオンの職業を知り、大切にしていた弟の仇を取るために力を貸してほしいと頼む。断り続けるレオンだったが‥‥。

出典:ポスターより

捨て猫の目をした孤独な魂

リュック・ベッソンの代表作として知られる本作は暴力的な激しいアクションが売りの映画ですが、その根底にあるのは、2つの孤独な魂についての物語です。
ニューヨークという大都会で、運命的に出逢ってしまった2つの魂‥‥。

イタリア系移民のレオンは、学校へ行く機会がなかったのか読み書きができません。友達もなく、滅多に外を出歩くこともなく、修行僧のように無口に日々を過ごしています。
殺しの仕事は恩人らしきレストラン店主からもらうのですが、報酬のほとんどは店主に預けて、生活に必要な分しか受け取りません。「貯金しといてやる」という店主の言葉を信じているようですが、計算ができないレオンは、うまく利用されているようにしか見えません。

そんなレオンには鉢植えの観葉植物だけが友達だったように、マチルダには4歳の弟しか心通う相手はいませんでした。

麻薬密売組織の一員であった彼女の実父は、再婚相手とその連れ子ばかりを可愛がり、虐待され居場所がなくなった彼女は寄宿学校に入れられています。
しかし学校にもなじめないマチルダは、弟に会うために、ときどき学校を抜け出してきてしまうのです。歓迎されないことはわかっているのですが‥‥。

©︎ 1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

1981年生まれのナタリー・ポートマンは、撮影時12歳。
捨て猫のような目、大人びた立ち居振る舞い、そのアンバランスさの中にもろく砕け散りそうな孤独の魂を感じさせて、圧巻の存在感を放ちます。

レオンとマチルダの出逢いのシーンは、実は一家皆殺しの数日前。
殺しの仕事から戻ったレオンが、アパートの廊下でうなだれているマチルダを見かけます。顔に傷があるのですが、どうしたのかと尋ねても、転んだ、としか言いません。

逆にマチルダは、レオンにこう尋ねます。
「大人になっても人生は辛いの?」
レオンは答えました。
「ああ、辛いさ」

大人になったナタリー・ポートマンは、本作についてこんな感想を述べています。
「控えめに言っても不快な描写がある」

本作の中で、マチルダはマドンナやマリリン・モンローのような仕草を見せたり、タバコを吸ったりする場面があるのですが、そうした演出、そのような年齢の少女にそういった振る舞いをさせる演出が、不快だということだと思います。

考えてみれば、本作のキャッチフレーズは「凶暴な純愛」。
レオンとマチルダの2人が男女の関係(もちろん、肉体関係はないのですが)に見えてこないと、この映画はドキドキしない。作り手にしてみれば、それがこの企画の大前提。

その狙いに沿った演出がなされ、12歳の彼女は意味もわからず、ただ懸命に監督やスタッフの期待に応えようとした、ということなのでしょう。
彼女の懸命な演技によって本作は高い評価を獲得し、本作の大ヒットによって、彼女(主演のジャン・レノもですが)の名前は世界に轟くこととなりました。

捨て猫の目をした孤独な魂‥‥。
12歳にしてそれを体現することができたナタリー。
この役に巡り会ってくれて、ありがとう。

本作を見ると、そんな思いが湧き上がってくるのです。
(さらに詳しい本作のレビューは、こちらからご覧いただけます

©︎ 1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

☆キック・アス

  • 『キック・アス』
  • 脚本
    ジェーン・ゴールドマン/マシュー・ヴォーン
  • 監督
    マシュー・ヴォーン
  • 主な出演
    アーロン・ジョンソン/クリストファー・ミンツ=プラッセ/クロエ・グレース・モレッツ/ニコラス・ケイジ
  • 2010年/アメリカ・イギリス/117分

あらすじ

アメリカン・コミックのヒーローに憧れる高校生デイブ(アーロン・ジョンソン)は、ネットで買ったヒーロースーツを着込んで夜な夜な街へ繰り出していく。困っている人を助けてこの街のヒーローになりたいのだった。
ある夜、そんな彼の人助けを動画に撮った人が彼に名前を尋ねた。彼は思わず「キック・アス」と名乗る。

この動画がまたたく間に拡散して、「キック・アス」はニュースにも取り上げられ人気者になる。

すっかり調子に乗ってしまった彼は、麻薬の売人にからまれて困っているという友人の話を聞いて、キック・アスの衣装で注意をしに行く。ところが訪ねたアパートは、大きな密売組織の支部のような所で、武器を持った強面の男たちに囲まれて絶体絶命のピンチに陥る。

そのとき突然窓から飛び込んできた覆面の少女が、そのピンチを救った。
とてつもない早業で敵を皆殺しにして彼を救い出し、窓外で待機していた覆面の男と合流した。

彼らはビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)とヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)。
この密売組織に復讐を誓った親子だった‥‥。

出典:ポスターより

最強ヒロインの折れない心は必見

次期ジェームス・ボンド役に内定と報じられて、最近何かと話題の多いアーロン・ジョンソンが主演のヒーロー映画です(この記事は2024年7月に書いています。ちなみに彼は結婚後、妻の旧姓を合わせてアーロン・テイラー=ジョンソンとクレジットされるようになっています)。

コミック原作ですが、ビッグ・ダディとヒット・ガール親子の設定がシビレます。
かつて刑事として密売組織を追い詰めていたビッグ・ダディは、組織の仕掛けた罠にはまり、犯罪の汚名を着せられ刑務所へ。妊娠中だった妻は失意のうちに自死。だが、その遺体から奇跡的に産み落とされた赤ん坊を、刑事の同僚が引き取り、育てていた‥‥。

やがて出所したビッグ・ダディは、その娘を脅威の戦闘マシーンへと育て上げた。
そして今まさに、密売組織を壊滅させるべく親子は動き出していたのだった‥‥。

というわけで、「脅威の戦闘マシーン」の年齢設定は11歳。

©︎ KA Films LP. All Rights Reserved.

演じたクロエ・グレース・モレッツは、1997年ジョージア州アトランタ生まれ。
撮影時は設定と同じ11歳で、アクション・シーンの90%以上を本人が演じたそうですが、本作はR指定だったため、完成した作品を観ることはできなかったのだとか。

本作公開寺のインタビューで、目標はナタリー・ポートマンと答えていたクロエ。
12歳のときに『レオン』(1994年)でヒロイン・マチルダを演じた先輩は、子役としてやはり意識しないわけにはいかなかったようです。

小さいときからバレエと体操を習っていたという彼女、本作のためにサーカスの訓練をし、マーシャルアーツにも取り組んでいます。その甲斐あってか、小さな身体でキレッキレのアクションを披露して、私たち大人の度肝を抜いてくれました。あっぱれ!

本作はヒット・ガールの大暴れを見てスカッとするための映画なのですから(アーロン・テイラー=ジョンソンのファンの方、すみません)、彼女のアクションのデキが映画の成否を決定づける要素だったのですが、その点もあっぱれ!

キュートなルックスと大人顔負けのアクションで本作をヒットに導き、続編『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2013年)へも出演を果たしました。

本作では中盤以降予想外に厳しい展開が続き、ついには敵のアジトにたったひとりで乗り込んでくことになるヒット・ガール。精神的にも肉体的にももうダメかと思う場面が何度もあるのですが、彼女は決してあきらめません。不屈の闘志で立ち上がり、観ているこちらの胸を熱くしてくれます。

最強ヒロインの折れない心。これは必見です。
(さらに詳しい本作のレビューは、こちらからご覧いただけます

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10代からの映画熱が高じて、映像コンテンツ業界で20年ほど仕事していました。妻モリコッチ、息子モリオッチとの3人暮らしをこよなく愛する平凡な家庭人でもあります。そんな管理人が、人生を豊かにしてくれる映画の魅力、作品や見どころについて語ります。

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