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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』レビュー☆冒険の果てにたどり着く場所

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アクションの森

冒険映画といえばこれ。オールドファンならずとも、この意見に同意の方は多いと思います。最新作では、主人公はついに考古学教授として定年退職を迎えます。果たして、どんな冒険が待ち受けているのでしょうか?


  • 『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
  • 脚本
    ジェズ・バターワース/ジョン=ヘンリー・バターワース/デヴィッド・コープ/ジェームズ・マンゴールド
  • 監督
    ジェームズ・マンゴールド
  • 主な出演
    ハリソン・フォード/フィービー・ウォーラー=ブリッジ/アントニオ・バンデラス/ジョン・リス=デイヴィス/カレン・アレン/マッツ・ミケルセン
  • 2023年/アメリカ/154分

※以下の記事は作品の魅力を紹介するため最小限のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

☆あらすじ

第二次大戦さなかの1944年、ナチスに奪われた秘宝「ロンギヌスの槍」を取り返すため、考古学者で友人のバジルとともに敵陣に潜入したインディ(ハリソン・フォード)は、ひょんなことからナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)が持っていた「アルキメデスのダイヤル」の破片を手に入れる。

時は流れて1969年。
定年を迎えたインディのもとをバジルの娘ヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)が訪れ、研究室の奥深くに保管されていたその「ダイヤル」を奪っていく。

彼女の目的は競売にかけて大儲けすることだったが、戦後正体を隠してアメリカのアポロ計画に携わっていたナチスのフォラーもまた、手下を従えてその行方を追っていた。
もうひとつの破片と合わせると、時空の裂け目の場所を知ることができると伝わる「アルキメデスのダイヤル」‥‥。

かつて冒険をともにした発掘屋サラー(ジョン・リス=デイヴィス)や旧友の潜水士レナルド(アントニオ・バンデラス)の助けを借りて「ダイヤル」を追うインデイだったが、彼が求めるその秘宝には、アルキメデスの思いもよらない策略が隠されていたのだった‥‥。

出典:ポスターより

☆インディ最後の冒険

前作から実に15年ぶりとなるシリーズ第5作。
撮影中に79歳の誕生日を迎えたハリソン・フォードは、インディを演じるのはこれが最後と明言しています。格闘シーンで肩を負傷。一時撮影中断も報じられましたが、無事完成してみれば、オールドファンの期待を遥かに超えるアクション大作となりました。

『スターウォーズ』(1977年)のジョージ・ルーカスと、『ジョーズ』(1975年)、『未知との遭遇』(1977年)のスティーヴン・スピルバーグがタッグを組んだ『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)から数えれば、なんと堂々42年の歳月を経ての公開。

念の為、シリーズのラインナップを確認しておきましょう。

  • 第1作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)
  • 第2作『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)
  • 第3作『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)
  • 第4作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)
  • 第5作インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023年)

それぞれの冒険の中身と時代設定をまとめると、こうなります。

  • 第1作:ナチスとの「聖櫃(アーク)」争奪戦(1936年)
  • 第2作:インド奥地の邪教集団の宮殿から秘石と子供たちを奪還する戦い(1935年)
  • 第3作:ナチスとの「聖杯」争奪戦(1938年)
  • 第4作:ソ連との「クリスタル・スカル(精神兵器の鍵を握る物体)」争奪戦(1957年)
  • 第5作:ナチスやナチス残党との「アルキメデスのダイヤル」争奪戦(1944年と1969年)

こうしてみると、第2作だけが時代を遡る形で、第1作の前日譚というか、1年前に偶然たどり着いたインドでの独立した冒険を描いていて、あとはだいたいナチスとの秘宝の奪い合いの話だということがわかります。
第二次大戦後の第4作だけは、ナチスの役回りがソ連に振り当てられているというところが興味深いですね。

インディの前に立ちはだかる敵たちは、だいたい崖から落ちたり、地面に埋まったり、乗り物から落とされたり‥‥、いともたやすく死んでいき、最終的には全滅してしまうのですから、そうなっても同情されないというか、そうなったことで拍手喝采が起きるような、そんな集団でないと物語上にうまくないのですが‥‥。まあ、そういうことなのですね。

第3作から第4作までが19年。そこからさらに15年後の公開となる本作。
その間にルーカスフィルムがウォルト・ディズニー・カンパニーに買収され、第5作の企画についても様々な報道がなされました。

そして公開予定日も新型コロナの影響などがあって再三延期されましたが‥‥、第4作まで監督を務めたスピルバーグが監督を外れてプロデュースにまわり、ジョージ・ルーカスが中身にタッチしない(クレジット上はいままで同様「製作総指揮」として名前がありますが‥‥)という大きな変化を伴いながら、ようやく実現したのが本作ということになります。

スピルバーグに代わって監督を務めたジェームズ・マンゴールドは、「すでにうまくいっているものを、わざわざ自分好みに変えてしまうことに興味はなかった」と語るように、本シリーズへの並々ならぬリスペクトを随所ににじませ、監督交代による違和感は微塵も感じない仕上がりに。オールドファンを歓喜させ、新たな観客の心も魅了するような、ワクワクする冒険譚を作り出しました。

例えば、第1作と第3作でインディの冒険に最後まで寄り添ったエジプトの発掘屋サラーが、インディの計らいでアメリカに移住していて、モロッコへ旅立つインディを見送ったり‥‥。

バジルの娘ヘレナにはテディ(演じているのはイーサン・イシドール)という孤児の少年が相棒としてくっついているのですが、インディを含めた3人の道中は、第2作の上海のクラブ歌手ウィリー(ケイト・キャプショー)と戦災孤児ショート・ラウンド(キー・ホイ・クァン)との冒険旅を思い出さずにはいられなかったり‥‥。

そしてシリーズの売り物であるアクションシーンにはさらに磨きがかかり、前作が『フォードvsフェラーリ』(2019年)というマンゴールド監督らしく、特にカーチェイス・シーンの派手さと長さには、誰もが圧倒されることでしょう。

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☆陸海空を股にかけ‥

本シリーズのアクションシーンといえば、次々と新しいアイデアを繰り出して破天荒な展開を見せることで多くのファンを楽しませてきましたが、その姿勢は監督が若返った本作にも見事に踏襲されています。

まず冒頭の1944年のエピソード。
ナチスの特別列車から友人バジルを伴って脱出する場面は、デジタル処理によって若返ったハリソン・フォードが、30代のインディを演じています。

いくつもの車両を行き交って逃亡し、さらに列車の屋根の上で繰り広げられる死闘‥‥。極上のスリルとちょっとしたユーモア‥‥。スピルバーグ演出が大切にしてきた本シリーズのテイストが見事に再現され、一気に物語に引き込まれると同時に、第3作のオープニングでリヴァー・フェニックスが10代のインディを演じたときの、列車からの脱出劇がダブります。

そして1969年は、アポロ11号が月面に降り立った年。
月面着陸の祝賀パレードを巻き込んでのカーチェイスは、警官から馬を奪っての騎馬アクションへ。騎馬のまま地下鉄の軌道を走り、地下鉄との正面衝突を避けて飛び乗ったホームから(馬を捨てて)地下鉄に乗車しての逃亡‥‥と、定年を迎えたインディはまだまだ若い‥‥。

奪われたダイヤルを追って訪れたモロッコでは、第1作を彷彿とさせる、狭い路地を使ってのカーチェイスが冴え渡ります。インディ、ヘレナとテディ、フォラー一味の三つ巴のチェイスは迫力満点。しかも、いつ終わるともなく続くチェイスはあり得ないアクションの連続ですが、とにかく楽しませてくれること請け合いです。

それから友人である潜水士の助けを借りて海中での捜索があり、さらに飛行機に潜入しての死闘ありと、まさに陸海空のすべてを使った冒険が繰り広げられます。
そしてその先に、陸海空では飽き足らず‥‥。

フォラー一味の真の狙いは、「アルキメデスのダイヤル」を使って1945年のヒトラーのもとへ行くこと。つまり、そうです。時空の旅‥‥。

しかし、アルキメデスはこの「ダイヤル」に、とある仕掛けを施していました。
それは、この「ダイヤル」を使って時空の裂け目に入った者は必ず「シラクサ包囲戦」(紀元前214年〜212年)の戦場にたどり着く、というもの。

アルキメデスがシラクサ防衛のために、知略をつくしてローマ軍と戦った「シラクサ包囲戦」‥‥。
劣勢に陥った味方のために、未来からの援軍を呼び寄せる装置として発明されたのが、「アルキメデスのダイヤル」だったのです‥‥。

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☆たどり着いたその場所とは?

ところで、これは第3作の終盤で明らかになったことですが、インディ・ジョーンズの本名はインディアナ・ジョーンズではありません。「インディ」はもちろん「インディアナ」の愛称ですが、彼の本名は「インディアナ」ではなく、「ヘンリー・ジョーンズ Jr.」だったのです。

父親のヘンリー・ジョーンズ・シニア(ショーン・コネリー)から「ジュニア」と呼ばれるのが嫌で、子供の頃に飼っていた犬の名前を名乗るようになったのだとか。
大谷選手が「大谷デコピン」と名乗っているようなものだったのですね。

そんな「ジュニア」にも実は年頃になる息子がいて、学校を退学してバイクを乗り回し、そしてやっぱり意外と冒険好き、とわかったのが第4作の中盤でした。
母親は第1作のヒロインで「ジュニア」、つまりインディと冒険をともにした、かつての恩師の娘マリオン(カレン・アレン)です。

第1作のあと、結婚寸前で喧嘩別れしたインディとマリオンでしたが、そのときすでにマリオンのお腹には赤ちゃんが‥‥。というわけで、クリスタル・スカルの冒険を終えて、ついに2人はめでたく結婚‥‥というのが、第4作のラストだったわけですが‥‥。

それから15年後に公開された本作では、インディとマリオンは離婚したあと。前作でともに冒険したあの息子も、ベトナム戦争に従軍して亡くなっています。
インディは息子を止めようとしたのですが、おそらく親子の関係はあまりうまくいっていなかったのでしょう。そして、息子を止められず死なせてしまったことが、夫婦の関係にも影を落としたに違いありません。

定年を迎えても祝ってくれる家族もなく、老人インディはひとり寂しく余生を過ごすのみ‥‥だったはずが、突然現れたバジルの娘ヘレナによって、再び無謀な冒険の海原に漕ぎ出していくことになったのです。
老体に鞭打ち、命知らずの冒険に挑む彼の心にあるのは、最愛の息子を止められなかったことと、そのことによってマリオンを悲しませてしまったことへの深い後悔の念でしょうか。

自責の念から自暴自棄へ‥‥。
我々のような凡人は、自暴自棄になると、何かロクでもない悪事に手を染めてしまいそうですが‥‥。
それを並外れた冒険のエネルギーに昇華させられるところが、類稀なる冒険家、我らがインディ・ジョーンズたる所以なのでしょう。

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さて、そんなインディの前にマリオンが姿を表すシーンは、不意にやってくるだけに感激するオールドファンが相次いだようで、「思わず目頭が熱くなった」とか、「涙があふれた」といった声が、公開当時のSNSを賑わせていたことを思い出します。

そこで交わされる2人のやり取りが、第1作のあるシーンとまったく同じ(男女は逆になっていますが)‥‥という粋な演出もあって、特にオールドファンにはたまらない場面になったと思います。
2人の見た目は、42年前とは激しく変わってしまっているのですけど‥‥。

インディだけじゃない。
どんな凡人にとっても、人生は言ってみれば「冒険」の連続だ。
そして、どんな凡人にも、冒険の果てにたどり着く場所がある。

決して長くはない2人のやり取りを観ていると、そうした感慨が襲ってきます。
その場所でどんな宝を手にするのか?
それは、そこにたどり着いた者にしかわからないことなのでしょう。

お疲れ様。
いろいろあったけど、素敵な場所にたどり着いたね。
スクリーンの中の老人に、そう声をかけたくなりました。

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モリゾッチ

モリゾッチ

10代からの映画熱が高じて、映像コンテンツ業界で20年ほど仕事していました。妻モリコッチ、息子モリオッチとの3人暮らしをこよなく愛する平凡な家庭人でもあります。そんな管理人が、人生を豊かにしてくれる映画の魅力、作品や見どころについて語ります。

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